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2008年5月1日更新 →バックナンバー
今回の趣味 インドネシアでの中学校支援


 留学や仕事で海外にすんでいる方にメディアを通した目ではなく、
ご自分で見たこと、聞いたことを伝えていただくコーナーです。
 第22回目はジャカルタから象さんがお送りします。 



インドネシアというとどんなイメージをお持ちでしょうか。
バリ島から連想される楽園のイメージ?
デモ、暴動が多発する危険地域?
イスラム教に象徴されるテロ国家?
鳥インフルエンザが当たり前のように起きている無法地帯?
どれもが本当であり、どれもが嘘。

今回は、そんなインドネシアでの教育支援の様子を少しだけ紹介します。
私が今働いているのはREDIPという中学校支援プロジェクトです。
JICAがインドネシアの教育省と協力して、技術支援をしています。
(詳しくはこちら→ http://www.redip.or.id

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公立中学校で行われた理科の電流を扱ったLesson Study(授業研究)。
椅子から立ち上がって実験道具に手を伸ばすのは
みんなが“学びたくなっている”証拠。
 インドネシアには大きく分けて教育省管轄の学校と宗教省管轄の学校があり、それぞれ公立と私立があります。
 最近は9年一貫教育が推進されていて、地域によっては小学校と中学校を通した9年制の学校を設置しているところも少なくありません。省が違うため予算編成も別であり、教える科目やカリキュラムもまったく異なります。
 例えば、教育省で新カリキュラムのために予算をとったとしても、宗教省管轄の学校には資金配賦されないばかりか、新カリキュラムがどんなものかの情報もいかないのが普通です。



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公立中学校の体育の授業(バドミントン)で順番を待つ生徒たち。
ラケットが人数分ないうえに、校庭のスペースが十分ではない。
 さて、REDIPプロジェクトはQualityとEqualityをモットーに、すべての学校に
共通の支援を行っています。教育現場でプロポーサルを作ってもらい、それに応じて予算配賦。現場で不要な支援を排除し、本当に必要な支援をしていこうという狙いです。
 先日、TPKという校長、学校委員会、地域代表者で構成される組織の訪問をしてきました。場所はプカロンガン。
 バティック(ろうけつ染め)を少しでも好きな人なら「プカロンガン・バティック」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。そうです、この県はバティックの名産地です。
 プロジェクトが始まってから5年。プロジェクトとして成熟しており、地方政
府、学校、地域のコミュニケーションがスムーズに行われているのがよくわかりました。インドネシアでは日本以上に地方分権化が進んでいて(どちらがいいというのは言えないと思いますが)地方教育の発展のためには、地方政府と学校との良好な関係がはずせません。その関係がきちんとできている、きちんと交流があるということだけでも、たいしたものだという印象があります。一方で、汚職の手垢でベタベタの地方政府は、教育予算をどんどん削ってしまうという悲しい現状もあります。



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私立宗教学校で行われたスピーチコンテスト。
このようなイベントがあると、地域住民は自ら寄付をするというのは校長先生の談。
 学校から挙げられてくる地方政府への不満は他県とさほど変らないものでした。「資金配賦がまだだけど、どうなっているのか」
プカロンガンの資金配賦は予定より1週間遅れるそうで、いろいろな予定をす
でに立てて中学校にとって1週間の遅れでもやきもきしている様子がわかりました。他県の状況を知っている私たちにとっては地方政府の資金配賦の遅延が一週間なんていうのはハエが留まっているようなもの。他県では資金を使い切らなくてはいけない1週間前に配賦されるなんて事があるのですから。
 REDIPプロジェクトでは「おらが村の学校」をひとつのテーマにしていて、単
なるプロジェクトではなく、REDIPモデルを応用して地域でひとつのシステムが出来上がることを目指しています。
 つまり、プロジェクトの成功の鍵のひとつは「地方政府、住民、学校が協力して教育問題に取り組むこと」。住民の意識が高く、学校に刺激を与えられる県では、学校も頑張ります。その県で一番の公立の学校が頑張ると、私立や宗教学校も一緒についてきます。このいい循環式ができあがると、改善・向上が地域の中でどんどん行われていくのです。



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大人たちだけでなく、子供たちも目を輝かせて先輩の姿を見守る。
こうして中学校へ進学したいという子供が増える。
 話は変りますが、最近読んだフィンランドの教育行政に関する本。フィンランドの教育を大きく変えたといわれる当時のフィンランド教育大臣(なんと29歳で就任!)の話では「平等かつ質の高い教育をめざし、一部の人を競争に勝たせるのではなく、国民全体の底上げをしてきたのだ」そうです。
 この考えはまさにREDIPのQuality and Equality。教育省管轄の学校と宗教省管轄の学校、どちらの学校にも平等に資金配賦をし、それが地域の教育を活性化させています。どの県を訪れてもこの平等性によって改善されたことが大きいというコメントが寄せられます。



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地域住民代表者も学校運営会議に参加する。
この地域では、高等教育への関心が高まり、
高校進学者が70〜80%になったとのこと。
 今の日本の学校はどうなのでしょうか。
2007年12月に日本の学校を訪れたカウンターパートたちは口をそろえて「学校がきれいだ」「先生のレベルが高い」と言っていました。専門家の人に聞いたところによると、日本の学校を見学したインドネシアの先生方、教育行政官は必ずそうコメントするのだといいます。日本の先生は、何かあっても自分たちで乗り越える力があるのだそうです。

インドネシアの教育支援に携わりながら日本を見つめる毎日です。
(写真はプカロンガン以外で撮影されたものも含まれます)



取材日:2008年4月15日/取材記者:象さん


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