小説化のエッセイは、その人の作品・作風が珍妙であったほうが面白い。
それは、作者が生活の中で感受したことが作品に大いに影響しているからである。
作者の物事の受け止め方、考え方、そしてそれらをどう熟成させて作品に投影しているのか、その過程が多少なりとも垣間見られるのである。その点で、角田光代のエッセイは読み応えがある。
例えばジミ・ヘン。『だれかのいとしい人』の一遍の中に、お守り代わりにジミ・ヘンのポスターを部屋に張る女の子話がある。
どうして女の子のがジミ・ヘンのポスターなんて、といぶかしく思っていた。
そしたら、それには作者なりの思い入れがあってのことだと、なぞが解けたりするのだ。
また、ヘッセの詩集から矢沢永吉まで、多様な2冊の本を落語の三題噺のように、半ば強引に結びつけるレビューは逸品。 |