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2013年3月14日更新 →バックナンバー
今回の趣味

第23回 初午祭


 妻沼聖天山に関係の深い、2つの神社の初午祭を見学してきました。
 初午祭は稲荷神社の祭礼で、2月の最初の午の日に行われる祭事です。なぜ、2月の最初の午の日かというと、京都伏見稲荷大社の祭神が、稲荷山の三ヶ峰に降臨したのが、和銅4年(711)2月の初午の日だったからと伝えられています。
 平安時代の頃から、初午の稲荷詣りが広く庶民の間にも盛んになって、全国各地の稲荷神社で春の祭事として行われてきました。
 ただ、興味を引くことは、神道の稲荷信仰と神仏習合した形で引き継がれている稲荷信仰があることです。
 今回は両方の初午祭を取り上げてみました。

●白髪神社(高岡稲荷神社)
 白髪神社(高岡稲荷神社)の初午祭は、3月3日に行われました。まだ、冷たい風が吹く中で、地区(熊谷市妻沼東岡)の役員さんが準備を始めていました。
 旧暦では今年の初午祭は、3月17日が該当しています。それぞれ、地域の都合で、日程を定めているようで、ここは3月の最初の日曜日でした。

妻沼聖天山界隈
白髪神社(高岡稲荷神社)参道


 この白髪神社(高岡稲荷神社)は、現在は小さな社ですが、妻沼地域内で、最も格式の高い神社であり、現在の聖天山境内にあったと伝えられています。
 埼玉の神社誌の記述を紹介します。
 「一説に、当社は『延喜式』神明帳に載る幡羅郡四座のうちの一座『白髪神社』であると伝える。これは『風土記稿』幡羅郡の中に白髪社が当社一社だけであることをその論拠としている。しかし、地形的にみて低地である現在地に社が奉斎されたとは考えにくく、後に他所から遷座してきたものと推測される。これについては『大日本史』の『白髪神社 今妻沼村に在り、白髪明神と称す。古へ大我井森に在り、後今の地に遷る』との記事が参考になろう。大我井の森とは、当社鎮座地南方の微高地にある聖天山歓喜院の境内一帯を指す。あるいは、女体様が座す女沼を切り開いて耕地となし、村落を形成して行く中で、村鎮守としての稲荷神社が祀られ、更に、大我井の森から白髪神社が遷座されたのであろうか。なお、白髪神社の創建には、清寧天皇の白髪部とのかかわりが考えられる。」

妻沼聖天山界隈
白髪神社(高岡稲荷神社)の祈祷風景

 社殿で祈祷が行われていました。
 祭神は、白髪武広国押稚日本根子命(しらがたけひろくにおしわかやまとねこのみこと 清寧天皇のこと)、天鈿女命(あまのうずめのみこと)、猿田彦命(さるたひこのみこと)、倉稲魂命(うかのみたまのみこと)の4柱です。

●赤子稲荷神社
 聖天山境内にあり、国宝聖天堂の南に位置しています。「延暦3年(874)に祀る。摩多利堂北にあり」、と旧妻沼町誌にあります。社名の「赤子」は「しゃくじ」と読み、聖天山から約700メートル西側に現存する小字名です。
 明治時代の神仏分離政策により、翻弄された歴史があります。
 明治元年に出された神仏分離令により、聖天山に祀られていた神々を新たな社殿に遷祀し、大我井神社を創建。その後、小さな社は、この大我井神社に合祀されました。その1つに赤子稲荷も含まれていました。その後、聖天山境内に再び遷祀され、現在に至っています。

妻沼聖天山界隈
赤子稲荷神社の祈祷風景

 初午祭は3月の始めの午の日となる5日に行われました。ここは稲荷神社らしく赤色の幟旗が、数基参道に立てられていました。
 聖天山歓喜院の僧侶により、祭事は執り行われ、読経による祈祷が行われていました。

妻沼聖天山界隈
稲荷大明神像

 明治以前は、神仏習合した稲荷信仰であったのでしょう。その稲荷大明神像(写真)は、白狐にのる女神(荼枳尼天)であったことから、大我井神社に合祀するに際して、当時の神職であった田島家に預けられ、祭神は稲荷神社の主祭神の倉稲魂命が祀られました。この時期は神道による稲荷神社であったのでしょう。
 その後の昭和34年に、現在地に新たな社殿を建てて、田島家に預けられていた稲荷大明神像を祀ったことが、記録に残されています。

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お札と団子

 参拝者の方々に、お札と団子が渡されます。繭玉状の団子は、農業神としての信仰の形を引き継いでいるようです。
 
 特定の地区で支えられている稲荷神社の初午祭が、いつまで存続するのか心配になります。国宝聖天堂の見学者は、彫刻に興味が集中し、それ以外は関心が薄いようで、聖天堂の目の前の赤子稲荷神社を詣でる人の姿はほとんどありませでした。

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*このコーナーの姉妹編となるホームページを作りました。ご覧になってください。
 ・『妻沼聖天山とその界隈



取材記者:逸見稔


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