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2007年8月6日更新
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木になったまことちゃん
なつやすみがおわりました。
まことちゃんは、きょうから、ようちえんです。
行きは、おかあさんがつれていきました。かえりは、おかあさんがつごうがわるいからと、ちかくにすんでいるおばあちゃんがたのまれました。
おばあちゃんは、まことちゃんといっしょにあるくのをたのしみに、むかえにいきました。
かえるとちゅう、さくらなみきにさしかかりました。
さくらの木で、せみがジージーとないていました。
まことちゃんは、せみをとりたいなあとおもいました。
でも、おばあちゃんは、まことちゃんのきもちには、ちっともきがつきません。
おばあちゃんは、あるきながら、どんどんおしゃべりをしました。
「おとまりは、たのしかったかい?」
「うん。たのしかったよ」
「ゆうごはんも、あさごはんものこさなかったかい?」
「うん。ぜ〜んぶ、たべた!」
まことちゃんが、げんきにこたえたときでした。
いっぴきのせみが、ジジッとなきながらとんで来て、まことちゃんのむねのしろいなふだにとまりました。
めろんいろのすきとおったはねのついたせみでした。まことちゃんは、さあ、どうしようとおもって、そこにたちどまってしまいました。
おばあちゃんはそんなこととはすこしもきがつきません。まだ、おしゃべりをつづけていました。
「おともだちのなかで、おうちへかえりたいといって、ないた子はいなかったかい?」
へんじがありません。
「きもだめしで、ないた子はいなかったかい?」
まだ、へんじがありません。
「だれか、おねしょをしなかったかい?」
それでもへんじがありません。
おばあちゃんは、ついさっきまで、はきはきとうけこたえしていたまことちゃんが、きゅうに、だまりこんでしまったのでしんぱいになりました。
ははん・・・さては、まことはおうちへかえりたいといってないたんだな。まあ、なんていう、いくじなし!
きもだめしではこわくてないてしまったんだな、かわいそうに。そんなとき、せんせいは、てかげんできないのかねえ。おねしょもしたんだよ、きっと。きのどくにさあ。きっとはずかしかったにちがいないよ。わたしに、こっそりあらってもらいたいっておもっただろうな・・・。
おばあちゃんは、だんだん、まことちゃんがかわいそうになって、なみだがわいてきました。
おばあちゃんは、まことちゃんがきのどくで、かおをみることができません。そこで、できるだけやさしいこえでいいました。
「おかあちゃんがこいしかったり、おばけがこわかったり、ねしょうべんがでてしまうのはだれにだってあることだよ。けっして、はずかしいことじゃないんだからね・・・」
それでもへんじがありません。
さすがのおばあちゃんも、がまんしきれなくなって、うしろをむきました。
すると、どうでしょう。
まことちゃんは、まだ、さっきのさくらの木の下にだまってたっているのではありませんか。
「おおい、まことや。どうしたんだね」
おばあちゃんは、いそいでひきかえしました。おばあちゃんがちかづくと、まことちゃんが、来てはいけないというようにウインクでしらせました。
おばあちゃんは、まことちゃんのむねにせみがとまっていることにすぐきがついて、あしをとめました。
「おや、まあ。なんてやさしい子なんだろう。まことちゃんは、木になってせみをとまらせてあげたんだね」
せみは、おばあちゃんのこえにおどろいたのか、しょうべんをとばしてにげてしまいました。
おばあちゃんがしんぱいしたことなどまことちゃんはまったくしりません。
おばあちゃんは、まことちゃんに、もうにどとおなじことをききませんでした。
「さあ、さあ、かえりましょう!」
おばあちゃんは、まことちゃんとてをつないでかえっていきました。
取材日:2007年7月10日/取材記者:ふくちゃん
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