6月中旬、コルク樫の皮剥きを見に、ポルトガルへ行きました。
「何それ?」と仰る方も多いと思いますが、ワインやシャンパンの栓に使われている、あのコルクです。コルクの原料がコルク樫の樹皮です。6月から8月くらいにこの樹皮を剥ぐ作業をします。
どうするかというと、丁度、羊の毛を刈るのを思い浮かべて頂いて、あれの樹木版と思っていただければピッタリです。 |
樹皮を剥かれた幹 コルクの樹皮 写真は約8cm |
どんぐりから25年経って、高さ1.2mの所で、幹の周りが70cm無いと、剥ぎません。初めて剥いだ樹皮をバージンコルクと言いますが、これは、
ごつごつしていて、栓には適さないそうです。一度剥ぐと、その後、9年間は剥げません。栓を作るのには、もう9年待って、3度目の樹皮からが良いものができるそうです。
木の寿命が大体150〜200年ですから、15、6回剥げることになります。 |
2009年に剥いた幹 山積みのコルク |
幹には、剥いだ年が印してあるので、木を見れば、9年後がいつかは、
一目瞭然にわかります。この皮剥き作業は、熟練者でないといけません。幹を傷つけてしまうと、その部分が死んで、樹皮ができないからです。
ですので、「斧の入れ方には、微妙な案配が必要なのです。」と聞いていたので、見ていた私に熟練工から「やってみる?」と、斧を差し出された時に、「良いのかしら」と思いながらも、好奇心が先に立ち、つい、受け取ってしまいました。でも心配は無用でした。何回やっても、力不足で一番外側の皮も傷つけられなかったのです。 |
皮剥き作業 樹皮 |
因みに彼等は、二人一組で、1日20本くらい剥ぐそうです。皮剥きは6月〜8月にかけて行います。集められた樹皮は、半年間天日で乾燥されます。その後、いくつかの工程を経て、良いものは、コルク栓製造会社へ送られ、厚みや、密度により、何段階かに分類されます。上等なコルク栓は、機械で無く、人が穴をあけ、別の人が見て、何等級かに分類します。更にそれをチェックする人がいます。ここまでして、上等なコルク栓を作るのですから、「ど素人の私でも、栓を見れば、ワインの良し悪しが判断できるかも」なんて、考えてしまいます。 |
栓を作った残り 修道院内部 |
残りは、どうなるかというと、ごみではありません。砕いて小さな粒にして、いろいろな用途に使います。ソフトボールや、野球のボールの芯、靴底、
ガスケット、ボード、コースター、炭化コルク、床材などなどです。
更に、余り(かす?)は、燃料になります。木の皮を剥いで、それを無駄
なく使えるなんて、地球にやさしい素材ですね。 |
外部にコルクをはったハノーバー万博の時のポルトガルパビリオン |
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